2009年7月12日日曜日

霧の東京湾上空と脳内ブルース

私はこの部屋に住むようになってから、
ちょっとだけ、雨が好きになりました。

しとしとしとしと降る雨も、
とっぷり街を浸す霧のような夜も、
この部屋から眺める東京が、
より、美しいなと気がついたから。
雨が降ると、街がこんな景色になるなんて、
それまでは全く知らなかった。


11月の<和の心にて候>に向けて、
いよいよ具体的な作業が始まってきました。

数ヶ月前、新之介組のみなさんとの顔合わせの後、
初めて踏み入った能楽堂の舞台は、
それ全体が、まるで怪物でした。
体中の細胞はざわめきを押さえきれず、
鼓動は全力で私にエマージェンシーコールを告げました。

例えば、数千人を収容するような大ホール、
野外ステージ、長い歴史のある舞台、
私がいままで出会ったどの舞台とも、それは、違っていました。


700年という時間を紡いだ、
能楽という芸に身を捧げた、
沢山の沢山の方の想念が、ここには、ある。
「純度が高い」と新之介さんは言っていましたが、
そう、つまりオベラをやったりバレエをやったり、
お芝居をやったり、その時その時で通り過ぎてゆく舞台ではないのです。

真情を吐露すれば、怯え打ちのめされてその場を後にしたけれど、
その後に見たMOA美術館の美術品の数々や、
新之介さん、そして新之介組のみなさんは、
そんな憂鬱を、しっとり美しいブルースが鳴り響く脳内へと、
変換してくれました。



そして私は、本番へむけて、
怪物と対峙するために、
毎日隅田川に吠え続けています。

大きな怪物と出会う度に、
その苦しみと引き換えにその幸運に感謝しよう。

そして、今日も美しいブルースを。

がお。